2018年5月28日月曜日

電卓で五次方程式を解く 後編

前回は5次方程式の解の候補を5つ見つけたところまででした。
電卓で五次方程式を解く 前編


あの5つの整数が全部解であったらここでおしまいなのですが、そんなわけがありません。
5つとも整数解だったらx^5の係数は1になるはずですから!
本当に解になっているかどうか確認するためには元の式で組み立て除法を行えばよいです。
が、ちょっと面倒ですね。
先に100で割った余りでチェックしてみましょう。
f(x)=90x^4+9x^3+20x^2+x+20
f(1)=40,f(9)=0,f(20)=40,f(21)=0,f(45)=40
となりましたので、解の可能性があるのはx=9,21だけです。
元の式をx-9で割ってみると、
f(x)=(x-9)(90000x^4-3442610x^3+40134919x^2-168186309x+211134420)
と因数分解できました。
g(x)=90000x^4-3442610x^3+40134919x^2-168186309x+211134420
とします。
これをx-21で割ってみると
g(x)=(x-21)(90000x^3-1552610x^2+7530109x-10054020)
と因数分解できました。
h(x)=90000x^3-1552610x^2+7530109x-10054020
とします。
h(9)=-2434449
h(21)=296867259
なので、重解にはなっていません。
整数解は9と21の2つのみ。残りは整数ではない有理数です。


5次方程式には代数的な解法はないというのは有名ですが、
三次方程式にはありますので、代数的に解こうと思えば解けます。
が、三乗根の和とかになってしまってあまり実用的ではないんですよね。
頑張ってもう一個解を見つけたいと思います。
f(x)のときと同様の考察により、
h(x)=0の解はすべて1.3<x<17.3の範囲にあることが分かります。
3つの解の既約分数がa/A、b/B、c/Cとなっているとすると、
h(x)=(Ax-a)(Bx-b)(Cx-c)と因数分解できます。
ABC=90000,abc=10054020ですので、
3つの解の積はabc/ABC=111.711・・・
4^3=64,5^3=125ですので、少なくとも解の一つは5未満です。
h(2)=-484242
h(3)=992817
ですので、2と3の間に解が存在します。
残り2つの解の積は大体37.2~55.8です。
どちらかは8未満です。
h(5)=31275
ですので5と8の間にあります。
h(6)=-1327326
ですので、5と6の間にあることが分かりました。
111.71/3/6=6.20・・・
111.71/2/5=11.1・・・
ですので、もう一つの解は6<x<11の範囲にあります。
h(8)=-3100188ですので、8<x<11
h(9)=-2434449ですので、9<x<11
h(10)=-13930ですので、10<x<11
3つの解は2と3の間、5と6の間、10と11の間にあることが分かりました。

x=a/Aとすると、
A^3*h(a/A)=90000a^3-1552610a^2*A+7530109a*A^2-10054020*A^3=0
a*A^2の係数以外は10の倍数になっていますので、
a*A^2は10の倍数にならなくてはいけません。
ABC=90000=2^4*3^2*5^4
ですので、A,B,Cは2,3,5以外の素因数を持ちません。
A=2^p*3^q*5^rとします。
p,q,rは0以上の整数です。
h(x)の各係数の素因数2,3,5の個数が分かる形に書きなおすと、
A^3*h(a/A)=2^4*3^2*5^4*a^3-2*5*155261*a^2*A+7530109a*A^2-2^2*3*5*167567*A^3=0
この式の各項の係数の素因数2の冪を調べてみましょう。
aとAは互いに素なので、pが0でない場合、aは2の倍数ではありません。
よって、各項の素因数2の冪はそれぞれ、4,p+1,2p,3p+2です。
p=2のときは、4,2,4,8であり、最初の冪2はただ一つだけです。
4つの項のうち3つは2^3の倍数であり、1つだけ2^3の倍数ではありません。
よって、その合計は2^3の倍数ではなく、0になることはありません。
つまり、p=2のときはa/Aは解ではないということです。
p=1のときは、4,2,2,5ですので解になる可能性はあります。
p=3のときは、4,4,6,8ですので解の可能性があります。
p=4のときは、4,5,8,8ですので解にはなりません。
B,Cについても同じことが言えます。
A,B,Cの素因数2の冪は0,1,3のいずれかです。
合計が4にならないといけませんので、A,B,Cの素因数2の冪は0,1,3です(順序は不明)。
素因数5の冪は、4,r+1,2r,3r+1
2のときと同じく、A,B,Cの素因数5の冪は0,1,3と分かります。
素因数3の冪は、2,q,2q,3q+1
q=1のときは、2,1,2,4ですので解にはなりません。
合計が2ですので、A,B,Cの素因数3の冪は0,0,2と分かります。
A,B,Cの素因数2の冪をそれぞれ0,1,3とすると、
5の冪の組み合わせは6通り、3の冪の組み合わせは3通りですので、
全部で18通りの組み合わせになるようですね。

分母として取りうる値の小さい順に調べていきましょう。
最小値は2です。
x=a/Aのとき、a*A^2は10の倍数でした。
A=2の場合、aは5の倍数でなくてはいけません。
3つの解は2と3の間、5と6の間、10と11の間にあることが分かっています。
2<a/2<3のとき、4<a<6ですのでa=5
5<a/2<6のとき、10<a<12ですのでa=11
10<a/2<11のとき、20<a<22ですのでa=21
解の可能性があるのはa=5のみです。
x=5/2=2.5は有限小数なので組み立て除法でx-2.5で割って問題ないでしょう。
計算してみると、h(2.5)=473690となりましたので解ではありません。

3,4の可能性はありませんので次は5です。
A=5の場合、aは2の倍数です。
2<a/5<3のとき、10<a<15ですのでa=11,13
5<a/5<6のとき、25<a<30ですのでa=27,29
10<a/5<11のとき、50<a<55ですのでa=51,53
abc=10054020=2^2*3*5*167567
ですので、aは167567の約数でなくてはいけません。
これが素因数分解できていれば話は簡単なのですが、時間がかかる可能性もありますので、
ここは素因数分解せずに先程の値で割り切れるかどうか一個一個確認することにします。
すると、すべて割り切れませんでしたので、いずれも解にはならないと分かります。

6,7の可能性はありませんので、次は8です。
A=8の場合、aは5の倍数です。
2<a/8<3のとき、16<a<24ですのでa=20
5<a/8<6のとき、40<a<48ですのでa=45
10<a/8<11のとき、80<a<88ですのでa=85
a=20の場合、20/8は既約分数ではないので不適です。
a=45は3^2を含んでいるので2^2*3*5*167567の約数にはならず不適です。
a=85=5*17は、167567が17で割り切れないので不適です。

次は9です。
A=9の場合、aは10の倍数です。
2<a/9<3のとき、18<a<27ですのでa=20
5<a/9<6のとき、45<a<54ですのでa=50
10<a/9<11のとき、90<a<99ですので解なし
a=20の場合
2^2*3*5*167567の約数にはなっています。
20/9は有限小数にはなりませんので、そのまま組み立て除法で計算すると誤差がでると思われます。
少し工夫をしましょう。
A^3*h(a/A)=90000a^3-1552610a^2*A+7530109a*A^2-10054020*A^3=0
でしたので、A=9のとき、
9^3*h(a/9)=90000a^3-1552610a^2*9+7530109a*9^2-10054020*9^3=0
k(x)=90000x^3-9*1552610x^2+9^2*7530109x-9^3*10054020
として、k(x)をx-20で割ればよいでしょう。
計算してみると、k(20)=0となりましたので、割り切れます。
途中の計算も10桁を超えることはありませんでした。
k(x)=(x-20)(90000x^2-12173490x+366469029)
と因数分解できました。
9^3*h(x/9)=k(x)でしたので、
h(x)=k(9x)/(9^3)(9x-20)(90000*9^2*x^2-12173490*9x+366469029)/(9^3)
h(x)=(9x-20)(10000x^2-150290x+502701)
となります。

あとは二次方程式を解くだけです。
解の公式を使えば一発で答えがでますね。
しかし、150290^2は10桁を超えてしまいます。
150290^2-4*10000*502701=10^2*(15029^2-4*100*502701)
と変形して、括弧の中を計算すると、225870841-201080400=24790441
これが平方数になっているはず。
平方根を計算するには開平法というものがありますが、
ちょっと説明が面倒なので、試行錯誤しながら見つけることにします。
k=24790441とすると、2*10^7<k<3*10^7
10^7は平方数ではないので1桁ずらして、24*10^6<k<25*10^6=(5*10^3)^2
kは5000の二乗に割と近いです。
49^2=2401ですので、(4.9*10^3)^2<k<(5*10^3)^2
4900<√k<5000です。
4950^2=24502500ですので、4950<√k<5000
4975^2=24750625ですので、4975<√k<5000
kの1の位が1ですので、√kの1の位は1か9です。
√kとなり得るのは、4979,4981,4989,4991,4999のみ。
4979^2を計算したらkと一致しました。
解の公式に従えば、解の一つは、
x=((150290+10*4979)/(2*10000)=2501/250
もう一つは、
x=((150290-10*4979)/(2*10000)=201/40

以上より、x=9,21,20/9,201/40,2501/250
と解がすべて求まりました。

最初の方程式
270000x^5-12757830x^4+213355227x^3-1588201740x^2+5174433603x-5700629340=0
の左辺は
3(x-9)(x-21)(9x-20)(40x-201)(250x-2501)
と因数分解できるわけです。

有理数解を持つという前提で解いたので大して苦労はしませんでしたね。
むしろ予想外の発見があったりして、楽しく面白かったです。

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