まず、面積について考えてみます。
最初にお断りしておきます。
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この文章を読んだことによって生じた損害について、私は一切責任を負いません。
おっと。これは面積ではなく、免責ですね(笑)。
長さ、面積、体積どれをとっても同じようなことは言えるのですが、
一番書きやすそうな面積について書きます。
面積とは平面図形の大きさ。
直線や曲線によって囲まれた領域の大きさを表すものです。
土地の面積を測ることによって作物の収穫量が予想できたり、
床面積を知ることによってどれだけのものが置けるのか分かったり、
実生活においても実用的な量です。
面積の満たすべき性質を考えてみましょう。
まず、合同な図形の面積は等しい。
図形Aが図形Bに完全に含まれるなら、Aの面積はBの面積以下。
当たり前ですね。これらが成り立たなかったら、広さの尺度にはなりません。
図形Aが図形A1,A2,A3,・・・といくつかの図形に分割できるとき、
Aの面積はA1,A2,A3,・・・それぞれの面積の和に等しい。
普通に考えればこれも成り立ちますね。
分割することができなければ面積の計算が大変です。
図形Aをいくつかに分割して、それらを組み合わせて図形Bを作ることができるとき、
図形Aと図形Bは分割合同といいます。
例えば、テトリスで落ちてくるピース(テトリミノ)は同じ大きさの正方形4個に分割できますので
すべて分割合同です。
分割合同な図形の面積は等しいです。
具体的に面積を計算する場合、基準となるものが必要です。
縦横の長さが1の正方形の面積は1だと決めましょう。
この正方形を単位正方形と呼ぶことにします。
図形が単位正方形に分割できる場合は正方形の個数が面積になります。
m,nが自然数の場合、m×nの長方形はmn個の単位正方形に分割できますので、
面積はmnです。
縦が1で横がm/nの長方形を考えます。
この長方形を横にn個並べると、横の長さがmの長方形になります。
この長方形の面積はmですので、元の長方形の面積はm/nです。
同様にして、縦、横の長さが有理数の長方形の面積は縦×横で計算できることが分かります。
縦、横が無理数の場合を考えてみましょう。
任意の無理数はそれよりちょっと小さな有理数とちょっと大きな有理数で挟むことができます。
その幅は好きなだけ小さくすることができます。
この長方形は縦、横が有理数の長方形で挟むことができ、その差はいくらでも小さくすることができます。
長さが無理数の場合も面積の極限は縦×横になるのです。
ちなみに、極限の定義は次のようなものです。
任意の正の数εについて、ある正の数δがあって、
|x-a|<δ⇒|f(x)-α|<ε
となる場合、x→aのときf(x)はαに収束するという。
辺の長さが無理数の長方形の面積も縦×横とするのが妥当です。
これで長方形については完全に面積が計算できるようになりました。
次に三角形について考察してみましょう。
任意の長方形は対角線を一本引くと、合同な直角三角形2個に分割できます。
それらの直角三角形の面積は長方形の面積の半分です。
逆に、任意の直角三角形は、それと合同な三角形をくっつけると長方形になります。
直角三角形の面積は、斜辺以外の2辺の長さの積÷2です。
斜辺以外の辺を底辺と高さとみなすと、底辺×高さ÷2です。
直角三角形ではない三角形の場合、
一つの辺を底辺とし、その辺に含まれない頂点から底辺までの距離を高さとします。
その頂点から底辺(を含む直線)に下した垂線の足が底辺上にある場合は、
その垂線によって、三角形が2つの直角三角形に分割されます。
それぞれの底辺を底辺1と底辺2とすると、
それぞれの直角三角形の面積は底辺1×高さ÷2及び底辺2×高さ÷2
その合計は(底辺1+底辺2)×高さ÷2
底辺1+底辺2は元の三角形の底辺に等しいので、
元の三角形の面積は底辺×高さ÷2です。
垂線の足が底辺上にない場合、
三角形ABCの底辺をBC、垂線の足をHとし、CよりBの方がHに近いとします。
三角形AHB,三角形AHCは直角三角形で
それぞれの面積はHB×AH÷2、HC×AH÷2
三角形ABCの面積は三角形AHCから三角形AHBを引いたもので
(HC-HB)×AH÷2=BC×AH÷2
この場合も三角形の面積は、底辺×高さ÷2で計算できます。
台形の面積は、(上底+下底)×高さ÷2
なんて公式がありますが、全く覚える必要はありません。
対角線を1本引けば2つの三角形に分割できますので、
それぞれの三角形の面積を求めて足せばいいだけです。
直線で囲まれた図形は三角形に分割できますので、面積の計算ができます。
直線で囲まれた図形でない場合、例えば円の面積はどうすれば求められるでしょうか。
長方形のときと同様に、計算できる図形で挟めばよいのです。
半径1の円の面積をSとします。
この円に内接する正六角形と外接する正六角形を書くと、
それぞれの面積は、(3√3)/2,2√3
2.598・・・≦S≦3.464・・・
正多角形の辺の数を増やしていくと、この差は0に近づいていきます。
円に外接する正多角形の面積は、
円の中心と各辺でできる三角形の面積の和です。
それぞれの三角形は底辺が正多角形の1辺、高さが円の半径と考えれますので、
面積の合計は、円の半径×(正多角形の辺の長さの合計)÷2です。
正多角形の辺の長さの合計は、円周の長さに限りなく近づいていきますので、
Sの値は円の半径×円周÷2に収束します。
ここで円周率に登場してもらいましょう。
円周率とは円の直径と円周の長さの比です。
なんで半径との比じゃないんだと文句を言いたくなるかもしれませんが、
このように決められていますので仕方ありません。
すべての円は相似ですので、直径と円周の比はどの円についても同じです。
円に内接する正六角形の周の長さは直径の3倍ですので、
円周率は3よりちょっと大きい値だと分かります。
円周率が大体3だと覚えていれば、直径に対する比だと判断できるでしょう。
円周率は慣例的にπ(パイ)と表記します。
円の半径をrとすると、円周は2πrです。
S=円の半径×円周÷2=r×2πr÷2=πr^2
ですので、円の面積はπr^2となります。
一般の曲線を含む図形の面積について。
f(x)=x^2のグラフとx軸、直線y=1で囲まれた領域の面積Sを求めてみましょう。
nを自然数として、区間[0,1]をn等分します。
k番目の区間は[(k-1)/n,n]と書けます(kは1以上n以下の整数)
この区間におけるf(x)の最小値はf((k-1)/n)、最大値はf(k/n)です。
縦がこの最小値、最大値、横が1/nの長方形を書くと、
この区間における求める領域はそれらの長方形で挟まれます。
Sのこの区間内の面積は、f((k-1)/n)/n以上f(k/n)n以下です。
よって、Σf((k-1)/n)/n≦S≦Σf(k/n)/n (k=1,2,3,...,n)
Σk^2=n(n+1)(2n+1)/6,Σ(k-1)^2=(n-1)n(2n-1)/6
ですので、
(n-1)n(2n-1)/(6n^3)≦S≦n(n+1)(2n+1)/(6n^3)
n→∞のとき、1/n,1/(n^2)は0に収束しますので、
(n-1)n(2n-1)/(6n^3)は2n^3/(6n^3)=1/3に収束することが分かります。
同様に右辺も1/3に収束しますので、S=1/3と確定します。
α≧0の場合に、y=f(x)とx軸、x=αで囲まれた領域の面積は(α^3)/3です。
このようにして、曲線で囲まれた領域の面積も計算できるのです。
これが積分の考え方ですね。
どんな図形でも面積を計算することができるのでしょうか。
例えば、y=0,y=1,x=0,x=1で囲まれる正方形Aを、
有理数点の集合Bとそうでない点の集合Cの2つに分割してみましょう。
有理数点とはx座標もy座標もともに有理数である点のことです。
どちらも無限個の点の集まりですが、点がくっついているわけではないので、
Bの面積もCの面積も0と考えたくなります。
ですが、それだとAの面積=Bの面積+Cの面積=0
となってしまいますので駄目です。
詳しくは書きませんが、ルベーグ測度という概念を導入して
このような図形の面積も定義することはできます。
Bの面積は0でCの面積は1と考えられます。
しかし、分割合同なのに体積が異なる図形というものを考えることができます。
バナッハ=タルスキーのパラドックスとか定理とか言われるものに登場します。
これは、一つの球をいくつかに分割して組み立て直すと、
元の球と同じ大きさの球を2つ作ることができるというとんでもないものです。
次回はその内容を具体的に見ていきたいと思います。
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