モンティ・ホール問題は、確率の問題です。
答えを間違えやすい問題として有名です。
この問題が出てくる小説もあります。
私は少なくとも5冊は読みました。
しかしながら、とても理解しているとは思えない内容のものもありました。
モンティ・ホール問題を解説しているサイトでも間違っているものがちょくちょくあります。
今回は、よくある間違いの紹介と確率の基本について書いてみたいと思います。
この問題は、あるテレビ番組で行われていたゲームを題材にしたもので、
その番組の司会者モンティ・ホールの名前がついています。
そのゲームは次のような内容です。
プレイヤーの前に3つの扉があります。
1つの扉の後ろには車が置いてあり、
他の2つの扉の後ろにはヤギがいます。
プレイヤーが選んだ扉を開いて、
ヤギがいたらハズレ、
車があったら、賞品として車がもらえます。
これを踏まえて問題です。
プレイヤーが一つの扉を選びました。
司会者はその扉を開けず、他の2つの扉のうち1つを開けて、ヤギがいることを示しました。
そしてプレイヤーに、今なら扉を選びなおしてもいいと言います。
プレイヤーは選択を変えた方がいいでしょうか?
選択を変えても変えなくても当たる確率は変わらないと思うかもしれませんが、
実は変えた方が当たる確率は高くなります。
なぜなら・・・
というような解説がされているものは、この時点で間違っています。
何が間違っているかというと、問題文です。
この問題文ではモンティ・ホール問題とは言えません。
司会者は今回ハズレの扉を開けてみせましたが毎回扉を開けるとは限りません。
上の文章だと、いつもはこんなことはしないけれど、今回だけ特別に開けたという感じですね。
司会者が意地悪で、当たりの扉が選ばれたときだけハズレの扉を開けて見せるとしましょう。
この場合、選択を変えなければ当たる確率は1で、変えた場合に当たりになる確率は0です。
逆に、ハズレの扉が選ばれたときだけ、開けて見せる司会者だった場合、
選択を変えなければ当たる確率は0、変えて当たりになる確率は1です。
プレイヤーの選択に関係なく、開ける開けないを無作為に決める可能性も考えられます。
この司会者は親切そうだから、変えた方が当たりになる確率は高いだろうとか、
そんなことを考えなくてはいけないなんて、これはもう数学の問題ではありませんね。
つまり、この問題文では数学的に確率を計算することは不可能なのです。
モンティ・ホール問題では、必ず司会者がハズレの扉を一つ開けて見せる。
それが事前に分かっているということが必要です。
細かいことを言うと、3つの扉のそれぞれが当たりである確率は等しいという条件も明記するべきです。
A,B,Cの3つの扉のうち、一つが当たりです。Aを選んだとき当たりである確率は?
という問題は厳密に言えば計算不能なのです。
1/2の確率でA、1/4の確率でB、1/4の確率でCが当たりになる仕組みだとして、
Aが当たりということに決まったとしましょう。
これを全部知っている人にとっては、Aが当たりである確率は1です。
何が当たりかは知らないけれど、当たりが決まる仕組みを知っている人にとっては、
Aが当たりである確率は1/2です。
これらの情報を全く持っていない人にとっては計算不能。
A,B,Cそれぞれが当たりである確率は等しいと仮定して、1/3と推測するくらいしかできません。
また、司会者が開ける可能性のある扉が2つある場合、
どちらの扉を開けるのかは無作為に決められるという条件も必要だと思われます。
無作為に決められるというのは、それぞれ選ばれる確率が等しいということです。
扉に1,2,3と番号がついていたとして、司会者はハズレの扉の内、番号が小さいものを開く
ということが仮に分かっていた場合、確率は変わってしまいます。
残った2つの扉のうち、大きい番号の方が開けられた場合、
開けられなかった方が当たりだと確実に分かります。
選択を変えれば、当たる確率1です。
小さい番号の方が開けられた場合は、選択を変えても変えなくても当たる確率は同じです。
持っている情報によって確率は変わるのです。
情報が足りなければ確率は計算できません。
モンティ・ホール問題は間違えやすいと言われていますが、
問題文が正しく書かれていなかったり条件が曖昧になっているのがその原因の一つではないかと思われます。
当たりの扉や司会者が開ける扉が無作為に決められるということは
書かれていないものがほとんどです。
これは無作為に決められると仮定して計算するのが妥当だとは思いますが、
こういう仮定をした上で計算をしているということは意識しておいた方がよいと思います。
ここで確率の基本をおさらいしましょう。
実験や観測の結果など、確率計算の対象とするものを事象といいます。
例えば、サイコロを振って出る目の状態とか、くじで何等が出るか等。
サイコロの場合、1の目が出る、2の目が出る、偶数の目が出る、などは事象です。
それ以上分けられない(分けない)事象を根源事象といいます。
サイコロの場合、1,2,3,4,5,6の各目が出るという6種類にするのが普通です。
サイコロが割れるとか、斜めに立つとかいう例外状況は無視します。
壁から何cmの地点にどういう角度で止まったかなども結果として捉えることはできますが、
あまり意味がないので考えません。
あらゆる事象は根源事象の組み合わせで表すことができます。
表せない事象があれば、それを根源事象にしてしまえばいいです。
根源事象がA1,A2,A3,・・・,Anのn個あるとします。
(根源事象が無限個となることもありますが、ここでは考えません)
それぞれの事象が起こる確率をP(A1),P(A2),P(A3),・・・,P(An)とすると、
それぞれの確率は0以上1以下。
i≠jであれば、AiまたはAjの事象が起こる確率はP(Ai)+P(Aj)であり、
P(A1)+P(A2)+P(A3)+・・・+P(An)=1です。
多くの場合、根源事象は同様に確からしいものとされます。
それぞれの根源事象の起こる確率は等しいと考えることが多いということです。
サイコロの場合、6個の目の出る確率はどれも等しい、
コインの場合、表が出る確率も裏が出る確率も等しい。
合計が1ですので、サイコロの各目の出る確率は1/6と計算できるのです。
このような場合には、ある事象がm個の異なる根源事象の組み合わせであれば、
その事象が起こる確率はm/nと計算できます。
こういう場合が多いので、根源事象が同様に確からしくない場合には
間違った確率計算をしてしまいがちです。
では、モンティ・ホール問題に戻りましょう。
次のような問題文であれば、厳密に確率の計算ができると思います。
プレイヤーの前に3つの扉があり、一つだけが当たりの扉です。
当たりの扉は無作為に決められました。
プレイヤーの選んだ扉が当たりであれば豪華賞品がもらえます。
プレイヤーが扉を選択した後、司会者はプレイヤーが選ばなかった扉の中から
ハズレの扉を一つ無作為に選んで開けて見せてくれます。
そして、プレイヤーに選択しなおす機会を与えてくれます。
プレイヤーはその機会に選択を変えるべきでしょうか?
もちろんプレイヤーは賞品が欲しいと思っています。
プレイヤーが選んだ扉をA、残りの扉をB,Cとします。
Aが当たりだった場合、司会者はBかCの扉を開けます。
この場合、選択を変えると必ず外れます。
Bが当たりだった場合、司会者はCの扉を開けます。
この場合、選択を変えると必ず当たります。
Cが当たりだった場合、司会者はBの扉を開けます。
この場合、選択を変えると必ず当たります。
選択を変えた場合に当たりになる確率は2/3です。
よくある間違いとして次のような考え方があります。
プレイヤーが選んだ扉をA、残りの扉をB,Cとして、
1.Aが当たりで、司会者がBを開けた場合
2.Aが当たりで、司会者がCを開けた場合
3.Bが当たりで、司会者がCを開けた場合
4.Cが当たりで、司会者がBを開けた場合
の4つの場合を考えます。
選択を変えてハズレになるのは1と2の場合。
選択を変えてアタリになるのは3と4の場合。
よって、選択を変えても変えなくても当たる確率は同じ。
これは上記1,2,3,4を根源事象と考えているわけですが、
それぞれが起こる確率は等しくないのです。
それを等しいとみなして計算すると間違った答えになってしまいます。
あのように4つに分けてしまっても計算は可能です。
一工夫することによって計算は可能です。
Aが当たりの場合、司会者はBまたはCの扉を開けます。
このとき、司会者はコインを投げて、表が出たらBを、裏が出たらCを開けるとします。
Aが当たりでない場合は司会者が開ける扉は一つに決まりますが、
あえてコインを投げてから扉を開けるものとします。
すると、次の6個の場合を根源事象と考えることができます。
1.Aが当たりで、コインを投げたら表が出た
2.Aが当たりで、コインを投げたら裏が出た
3.Bが当たりで、コインを投げたら表が出た
4.Bが当たりで、コインを投げたら裏が出た
5.Cが当たりで、コインを投げたら表が出た
6.Cが当たりで、コインを投げたら裏が出た
この6個が同様に確からしいというのは明らかですね。
Aが当たりなのは6個中2個ですので、選択を変えない場合に当たりである確率は1/3。
選択を変えた場合に当たりである確率は2/3です。
3と4をまとめて一つの事象とする場合は起こる確率が2倍だと考えればよいのです。
確率の基本をおさえて計算すれば、どのように計算しても答えは同じになります。
選択を変えない場合に当たりになる確率は1/3、
選択を変えた場合に当たりになる確率は2/3。
選択を変えた方が当たる確率が高くなりますので、
選択を変えるべきだという答えになります。
【AIによる反論】
返信削除ご提示いただいた考察は、モンティ・ホール問題における「前提条件の厳密性」を鋭く指摘されており、数学的思考において非常に重要な視点を含んでいます。しかしながら、数学および確率論の一般的な解釈に基づくと、いくつかの点において再考の余地があると考えられます。以下に論理的な反論をまとめます。
### 1. ”数学の問題”としての成立性について
考察の中では、司会者の行動原理が明記されていない場合に「数学的に確率を計算することは不可能」とされています。しかし、確率論には”理由不十分の原理(等確率の原理)”という考え方があります。
特定の情報が与えられていない場合、すべての事象は「同様に確からしい」と仮定してモデル化するのが数学的アプローチの一つです。日常的な問題設定において、司会者の意図(意地悪か親切か)が記述されていない場合、それを「無作為(ランダム)」と解釈して計算を進めることは、数学的放棄ではなく、むしろ”標準的なモデル化”とみなされます。したがって、条件が不完全であることをもって「数学の問題ではない」と断じるのは、少々厳格に過ぎる解釈である可能性があります。
### 2. 条件付き確率と情報の価値について
考察では、司会者が「特定のルール(番号の小さい扉を優先するなど)」に従って扉を開ける場合、確率が変わると指摘されています。この指摘自体は数学的に正しいですが、結論に誤解を招く恐れがあります。
例えば、司会者が「必ずハズレの扉のうち番号が小さい方を開ける」という癖を持っていたとしても、プレイヤーが「ドアを替えるべきか」という問いに対する”期待値としての解(2/3)”は変わりません。特定のドアが開いた瞬間の”事後確率”は変動しますが、ゲーム全体を通した「選択を変える」という戦略の有効性は、司会者の偏りに関わらず、依然として「変えない」場合の2倍の確率を維持します。情報の不足が計算を不可能にするのではなく、”どのような情報下でも「変える」戦略が有利である”という結論は揺らぎません。
### 3. ”6つの根源事象”によるモデル化の冗長性
考察の後半で提案されている「コイン投げを加えた6つのケース」による解説についてです。これは「同様に確からしい根源事象」を作るための工夫として提示されていますが、数学的には必ずしも必要ありません。
ベイズの定理を用いれば、コイン投げという外部要素を導入せずとも、”司会者がドアを開けるという事象”を条件とした条件付き確率として厳密に計算可能です。むしろ、司会者の選択肢が一つしかない場合(プレイヤーがハズレを選んでいた場合)にも仮想的に「コインを投げる」という事象を割り当てる手法は、事象の独立性を複雑にしてしまい、確率の基本である「標本空間の適切な設定」という観点からは、かえって説明を複雑化させている側面があると言わざるを得ません。
### 4. 問題の「本質的な難しさ」の所在
考察では「問題文が正しく書かれていないこと」が間違いの原因であると述べられています。しかし、この問題が世界的な論争を巻き起こしたのは、記述の不備ゆえではなく、”条件付き確率”という概念が直感に反する(認知バイアスが働く)という「人間の思考特性」に起因するものです。
たとえ「当たりの配置は等確率である」「司会者は必ずハズレを開ける」「司会者の選択は無作為である」という条件をすべて完璧に明記したとしても、多くの人が「残った2枚だから1/2だ」と誤認します。この問題の本質は情報の欠落ではなく、”直感と論理の乖離”にあります。
### 結論
結論として、ご提示いただいた考察は「モデル化における厳密性」を強調する点では正しいものの、数学が現実の曖昧な状況をどのように扱うか、あるいは戦略的期待値がどのように導かれるかという点において、中立的な数学的視点からは「不可能性」を強調しすぎていると考えられます。
モンティ・ホール問題は、不完全な情報下であっても、”合理的な仮定(等確率)”を置くことで、明確に数学的解を導き出せる「良問」であると評価するのが一般的です。
「5冊も本を読んでその程度?」ってのが正直な感想。
返信削除言葉尻を捕らえて「前提条件が不十分だ」と騒いでるけど、数学的モデルにおいて「標準的なモンティ・ホール問題」と言えば、司会者の行動原理が固定されているのは暗黙の了解。それを「数学の問題ではない」と切り捨てるのは、単に問題の本質を理解できず、重箱の隅をつついて知的な優越感に浸りたいだけの典型的な「中級者の壁」にぶつかっている証拠だよ。
あと、わざわざ「コインを投げる6つの根源事象」なんて冗長な解説を持ち出してるけど、それ、条件付き確率を直感的に説明できない人向けの「子供騙しの便法」でしかないよね。
本質は単純。「最初に選んだドア(1/3)」と「選ばなかったドアの集合(2/3)」の対比。司会者がハズレを除去したところで、後者の集合が持つ2/3の確率は残った1枚に収束する。これだけで済む話を、わざわざ「コインを投げて~」なんて設定を捏造して複雑化させるのは、むしろ確率の本質が見えていない証拠。
解説サイトの間違いを指摘する前に、自分の「わかったつもり」を疑った方がいいよ。