2017年10月12日木曜日

極限脱出パロディ小説 第一話

※この小説は極限脱出シリーズ「9時間9人9の扉」「善人シボウデス」「刻のジレンマ」に
インスピレーションを得て作ったパロディ小説です。
登場人物の名前を拝借したりはしていますが、ゲームのネタバレ等はありません。
全十話の予定です。

◇◇◇
目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。
そこはベッドが一つあるだけのがらんとした部屋。
窓はなく、金属製の扉が一つだけある。
俺は何があったのか思い出そうと記憶を探る。

昨夜 帰宅すると窓が開いていたので不審に思って近づいたところ、
窓ガラスに黒ずくめの人物が映り込んでいるのが見えた。
はっとして振り返ると、分厚いフードにガスマスク姿の怪しい奴が手りゅう弾のようなものを放り投げた。
ガスが噴き出し、俺の意識が薄れていく。
「光栄に思うがいい。お前は運命のゲームに選ばれたのだ」
それが最後の記憶だった。

どうやら俺は誘拐されたらしい。
手錠や足枷などはされていなかったが、手首に大きな時計のようなものがはまっていた。
時計であれば時刻が表示されるところに数字の「5」だけが大きく表示されている。
外そうとしても外れないので、それはそのままにして扉に向かう。
扉はロックされているようでびくともしない。
横に暗証番号を入力すると思われる装置があり、いくつかのボタンと意味の分からない文章が書かれていた。

1 2 3
4 5 6
7 8 9
0 C E

回るのは目
変わるの日
問いかけるのは昼
扉を開くのは魔界の人

とりあえず適当に数字のボタンを押してみると、押した通りに数字が表示される。
Cを押すと数字の表示が消える。どうやらこれはリセットボタンのようだ。
1,2,3,4のボタンを押して「1234」と表示された状態でEを押してみる。
ビープ音が鳴り、「ERROR」と表示される。
正しい暗証番号を押してEのボタンを押せば扉は開くのだろう。
いくつか適当に試してみたが、すべてERRORであった。
そりゃそうだよな。桁数すら分からないのに。

恐らくあの文章が暗証番号をつきとめるためのヒントになっているに違いない。
俺はじっくりと文章を読んでみた。
やっぱり意味が分からん。
ま、文章自体に意味はないんだろう。
「扉を開くのは魔界の人」ということは、「魔界の人」が暗証番号を表していると思われる。
俺は悩んだ末になんとか答えにたどり着いた。


早速つきとめた番号を入力してみると、扉はすんなりと開いた。
扉を開けると一本道の廊下が伸びている。
俺は廊下に足を踏み出した。

しばらく廊下を歩いていくと突き当たりに扉が見える。
この扉もロックされているのかとちょっと不安だったが、取っ手を引くとあっさりと開いた。
扉をくぐるとそこは大きな部屋だった。
壁の一つには大きなスクリーンが設置されている。
他の壁には扉がいくつか見える。
どこから調べようかと思っていると、扉の一つが開き、女性が入ってきた。

「淳平君?」
彼女は驚いた顔で俺を見つめる。
誰だっけ?と思ったものの、口が勝手に動いていた。
「茜?」
教室で彼女と会話をしている光景が再生される。
そうだった。彼女の名前は倉敷茜。昔のクラスメイトだ。
こうして顔を合わせるのは数年振りになる。
「なんでこんなところに?」
「えっとね、私・・・」
そのとき、別の扉が開いておっさんが入ってきた。
「おい!お前らが俺をこんなところに連れてきたのか!」
「ち、違いますよ」
3人で状況の確認をしていると、ぽつりぽつりと人がやってきた。


あれから5分程でこの部屋の人口は8人になった。
「一体何人いるんだよ」
「さてね」
そのとき、壁に設置されているスクリーンが点灯した。
フードをかぶった人物が映し出される。
「運命のゲームにようこそ。
私はゼロ。
君たちには生死を賭けたゲームに挑戦してもらう。
最初に言っておくが、この映像は録画である。
プレイヤー全員がこの部屋に入ったら、自動再生されるようになっていた。
録画であるから、君たちの質問に答えることはできない。

プレイヤーの手首にはバングルが取り付けられている。
詳しい説明は後で行うが、バングルを外れた場合は失格、ゲームオーバーとなる。
外そうなどとは考えないことだ。

このスクリーンのある壁と反対側の壁には次の部屋へと通じる扉がある。
今鍵を開けたので、その扉を通って次の部屋へ向かうがいい」
画面が消えた。

俺たちは移動する前にそれぞれの経緯の確認や自己紹介をすることにした。

名前は一宮、ニルス、サンタ、四葉、淳平、茜、セブン、八代。
全員ガスで眠らされてここに連れてこられたらしい。
閉じ込められた部屋の状況や扉の暗証番号も同じだったそうだ。
「しかし不思議ですね」
「何が?」
「最初にこの部屋にたどり着いたのは淳平でしたね。
それから8人全員が揃うまでに5分程しかかかっていません」
「それがどうしたんだ?」
「目覚める時間にも問題を解く時間にも個人差があるはずです。
あの問題は解けない人がいてもおかしくないのに全員が解けて、
しかも解くのにかかった時間がほぼ同じというのはおかしいと思いませんか?」
「そう言われると不思議だな」
「そういえば、私こんな問題解けっこないって思っていたんだけど、
急に答えが頭の中に浮かんできたんだよね」
何人かがうなずいています。
「こんな話知ってる?
ある島で猿の一頭がサツマイモを川の水で洗って食べるようになったの。
それがあっという間に群れに広がり、島全体の猿が同じ行動をするようになった。
それだけじゃなくて、何の交流もないはずの他の島の猿までもが同じことをするようになり、
日本全体にそれが広がったの。
まるでテレパシーで伝わったように」
「ふん。ただの偶然だろ」
「おいおい。まさか、さっきの問題の答えがテレパシーで伝わったって言うんじゃないだろうな」
「さあ、どうでしょうね」

続く。


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