2018年2月28日水曜日

ぐんぐん群が分かる3

前回までの話
ぐんぐん群がわかる
ぐんぐん群がわかる2

群Gの元が有限個のとき、Gは有限群といいます(そのまんま!)。
Gの元の個数をGの位数といい、|G|とかord(G)などと書きます。
乗法に関して有限群になる集合を考えると、
まず、G={1}。単位元のみの群です。
G={-1,1}も{-1,1,-i,i}も群になります。
一般にnを自然数の定数としたとき、方程式 x^n=1 を満たす複素数の集合は群になります。
時計みたいなものですね。
時刻も群になります。
G={1時、2時、3時、4時、5時、6時、7時、8時、9時、10時、11時、12時}として、
11時+2時=1時というような時刻の足し算を考えれば、加法について群になります。
単位元は12時です。

Gが先ほどの時刻の群の場合、偶数時刻だけの集合{2時、4時、6時、8時、10時、12時}は部分群です。
3の倍数の時刻、4の倍数の時刻も部分群になります。
H={3時、6時、9時、12時}とします。
Hの各元に1時を足してできる集合をH1とすると、H1={4時、7時、10時、1時}となります。
2時を足した場合、H2={5時、8時、11時、2時}
3時を足した場合、H3={6時、9時、12時、3時}
4時を足した場合、H4={7時、10時、1時、4時}
H4はH1に等しいです。
4時、5時、6時・・・と足していくと結果はH1,H2,H3の繰り返しとなります。
H1,H2,H3には重複する元はなく、Gのすべての元が含まれます。
Gは部分群Hを使ってH1,H2,H3の和に分解されるのです。


では一般的に。
Gを群とします。
a,b∈Gに対してaとbの演算をabで表します。
HをGの部分群とし、aHという集合を次のように定義します。
aH={ah|h∈H}
これをaのHを法とする左剰余類といいます。
「左」がついているのはaを左から掛けているからで、右に掛けたときは右剰余類(Ha)となります。
可換とは限りませんので左と右を区別する必要があるのです。
以後「左」は省略します。
剰余類は群の部分集合です。
時刻群の例で見たように、Gは剰余類の和になります。
任意のa∈Gには逆元が存在します。aの逆元を(-a)と書くことにします。
(普通は逆元は-1乗という形で書きますが面倒なので-にしました)
g∈G、h∈Hに対して、a=g(-a)を考えます。
a∈Gであり、ah=g(-a)a=gですので、gはいずれかの剰余類に含まれます。
Gの任意の元はいずれかの剰余類に含まれます。

異なる剰余類には共通する元はありません。
a,b∈Gとします。
aHとbHに共通する元があったとすると、あるh1,h2∈Hがあって
a*h1=b*h2であり、a=b*h2*(-h1)
任意のh∈Hについて、a*h=b*h2*(-h1)*h
h2,(-h1),hはすべてHの元ですので、h2*(-h1)*hもHの元です。
よって、a*hはbHの元であることが分かります。
任意のaHの元はbHの元です。
逆も言えますので、aH=bHです。
aHとbHは全く同じ集合であるか、共通の元を持たないかのどちらかです。

ここまでは有限群に限らずいえることです。
有限群の場合、各剰余類の元の個数は等しいです。
a,b,c∈Gについて、
b≠cであればab≠acです。
ab=acであれば、(-a)を掛けた時にb=cとなり矛盾します。
よって、HとaHの元の個数は等しいです。

元の個数が同じ集合の和に分割できるということは、
Gの位数|G|は、Hの位数|H|と剰余類の個数の積になるということです。
ある群の部分群の位数はもとの群の位数の約数になるのです!

次は元の位数について。
Gを有限群、Gの単位元をeとします。
Gの元aのn個の積をa^nと書くことにします。
a^n=eとなる最小の自然数nを、aの位数と言います。
任意の元は何回か掛け合わせると必ず単位元になるんですねー
証明してみましょう。
a,a^2,a^3,・・・,a^|G|
という|G|個の中にeと等しいものがあれば成立しています。
ない場合を考えます。
Gの元の個数はeを含めて|G|ですから、eを除いた場合、
|G|個の元の中には同じものが必ず存在します。
その二つを a^k1 と a^k2 としましょう(k1<k2)。
a^k1=a^k2=a^k1 *a^(k2-k1)
a^k1の逆元を掛けると、e=a^(k2-k1)となり矛盾します。
証明終わり。

Gの元aの位数をnとします。
H={a,a^2,a^3,・・・,a^n(=e)}
を考えると、HはGの部分群です。
この群のことをaから生成される巡回群といいます。
Hの位数はnでaの位数と等しいです。
部分群の位数はもとの群の位数の約数でしたので、
Gの任意の元の位数は|G|の約数です。

次回はいよいよ円順列、数珠順列の登場です。

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