2018年2月23日金曜日

ぐんぐん群が分かる2

前回の話
ぐんぐん群がわかる

今回は予告通り、対称群についてです。

n次の置換を元として、置換の積を演算とする群をn次の対称群といいます。
置換は順列(1,2,3,・・・,n)の並びを変える操作や変換と考えればいいでしょう。
単位元は順序を変化させない置換です。これを恒等置換といいます。
逆元は順列を元に戻す変換ですね。
交換法則は成り立ちませんのでアーベル群ではありません。
(n=1,2の場合はアーベル群です)

n個のものの順列の総数はn!個ですので、元の個数はn!個です。
n個のうち2個の位置だけを入れ替える置換を互換といいます。
i番目とj番目を入れ替える互換のことを(i j)と書いたりします。
任意の置換は互換の積で表すことができます。
2個の入れ替えを何回か行えばどんな順列を作ることもできるということです。
これはほとんど明らかですね。
順列(1,2,3,・・・,n)を並べ替えて順列を作ったとします。
作った順列の1番目が1でなければ、その番号と1番を入れ替えば1番は1になります。
その操作の結果、2番目が2になっていなければその番号と2番を入れ替えます。
これを繰り返すと、高々(n-1)回の入れ替えで元の順列になります。
この操作を逆に行えばよいです。
これは唯一の方法ではなく、互換の積としての表し方は一意には決まりません。
例えば、(1 2)(1 3)(1 2)=(2 3)、(2 3)(1 2)=(1 2)(1 3) です。
但し、互換の個数の偶奇は積の表し方によらず、一定です。
偶数個の互換の積の形に書けた置換は、他の表し方でも偶数個の互換の積になります。
恒等置換は互換0個の積、互換は互換1個の積と考えます。
奇数個の互換の積で表せる互換を奇置換、偶数個の互換の積で表せる置換を偶置換といいます。
恒等置換は偶置換、互換は奇置換です。
偶置換の積は偶置換であり、偶置換の集合は群になります。これをn次の交代群といいます。
このような群を部分群といいます。
ある群の部分集合が(同じ演算について)群になっているということです。
もちろん自分自身も部分群ですし、単位元のみで構成される群も部分群です。
群Gの部分集合Hが部分群であるかどうかは、次の3点を確認すれば十分です。
・Gの単位元がHの元であること
・Hの元同士の積がHの元になること
・Hの元の逆元がHの元になること
もちろん積や逆元というのはGにおける積や逆元です。



次に巡回置換について。
巡回置換とは、1番を2番に、2番を5番に、5番を1番にというように、
いくつかの位置を巡回させる置換です。
1番、2番、5番にひもを通して輪をつくり、それを回転させて位置を一つずつずらす感じです。
この場合、3回の移動で元の位置に戻ります。
この巡回置換を(1 2 5)と記述することにします。
(2 5 1)も(5 1 2)も同じ巡回置換です。
()内の数字の個数は巡回置換の長さといいます。
(1 2 5)は長さ3の巡回置換。(1 2 3 4)は長さ4の巡回置換です。
恒等置換は長さ1の巡回置換、互換は長さ2の巡回置換といえます。
ある長さnの巡回置換のn個の積は恒等置換になります。
(1 2 3)=(1 2)(2 3),(1 2 3 4)=(1 2)(2 3)(3 4),(1 2 3 ・・・ n)=(1 2)(2 3)・・・(n-1 n)
ですので、長さnの巡回置換は(n-1)個の互換の積で書けます。

順列(1,2,3,4,5)を順列(3,5,1,2,4)に変換する置換を考えてみましょう。
まず1がどこに移動しているのか見てみると、変換後の順列では1は3番目にきています。
最初に3のあった位置です。
次に3がどこに移動したのか見てみると、3は最初に1があった位置にきています。
1と3の場所は入れ替わっています。
この変換は互換(1 3)で表せます。
それ以外の数字はどうなったのでしょうか。
1,3以外で一番小さい数2に注目します。
すると、2は4の位置に、4は5の位置に、5は2の位置にと巡回移動していることが分かります。
これは巡回置換(2 4 5)で表せます。
互換(1 3)と巡回置換(2 4 5)は共通する数字がありませんので、
どちらを先に行っても結果は変わりません。
(3,5,1,2,4)に変換する置換は(1 3)(2 4 5)または(2 4 5)(1 3)と書けます。
任意の置換はこのように巡回置換の積に分解することができます。
分解の仕方は先ほど行ったとおりです。
1の移動先に元々あった数、その数の移動先に元々あった数、
というようにたどっていくと、必ず1に戻ります。
一応証明しておきましょう。
1に戻ることはないと仮定します。
上の手順で得られる数列の中に現れる数の種類は有限個ですので、
1以外の数が2回以上現れます。
この数列で同じ数字が初めて現れたところまでに注目します。
その数字の1回目はm番目、2回目はn番目とします。
数列の1番目の数は1ですので、m>1です。
同じ数はm番とn番だけですので、(m-1)番と(n-1)番は異なる数です。
つまり、異なる数が同じ数に移動することになり、矛盾です。
よって仮定は誤りであり、必ず1に戻ります。
1に戻ったときに、このループに含まれない数があれば、それを起点として移動先を調べます。
このときも必ず最初の数に戻りますので、別のループができます。
これをすべての数を含むようになるまで繰り返せば分解完了です。
それぞれのループは巡回置換で表せますので、任意の置換は巡回置換の積に書けます。
さらに、それらの巡回置換には共通する数が全くありません。
どのように積の順番を変えても結果は変わりません。
このように2つの置換の対象に共通部分がない場合、それらは互いに素であるといいます。
任意の置換は互いに素な巡回置換の積に分解できるのです。
作り方から明らかなように一意に決まります(積の順序は無視です)。
これは自然数の素因数分解と非常に似ていますね。

あるn次の置換が互いに素な巡回置換a,b,cの積abcになっているとします。
それぞれの長さをx,y,zとすると、x+y+z=nです。
恒等置換をeとすると、a^x=b^y=c^z=eです。
(a^xはaをx回掛けた積です)
a,b,cは互いに素なので、(abc)^2=(a^2)(b^2)(c^2)というように、
abcの累乗は巡回置換の累乗の積と等しいです。
x,y,zの最小公倍数をmとすると、
a^mはa^xの累乗になるのでeと等しく、同様にb^m=c^m=eとなることが分かります。
よって、(abc)^m=eです。
つまり、同じ置換を繰り返すとどこかで必ず最初の状態に戻るということです。
x+y+z=nですので、x,y,zはいずれもn以下の自然数です。
よって、x,y,zはいずれもn!の約数です。
従って、mもn!の約数です。

対称群についてはこれくらいにしておきます。
次回は有限群の位数について。

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