2018年3月5日月曜日

ぐんぐん群が分かる4

前回までの話
ぐんぐん群がわかる
ぐんぐん群がわかる2
ぐんぐん群がわかる3

まずは順列、組み合わせについて。

異なるn個の中から異なるr個をとるときに、
とった順番を考えない場合は組み合わせ
とった順番も考える場合は順列
と言います。

例えば4個の数字1,2,3,4から3個とる場合、
1,2,3という取り方と3,2,1という取り方を区別して別物だと考えるのが順列です。
組み合わせの場合は集合としてはどちらも{1,2,3}ですので同じものと考えます。
組み合わせは{1,2,3},{1,2,4}{1,3,4}{2,3,4}の4個。
{1,2,3}について順列は123,132,213,231,312,321の6個。
各組み合わせにつき6個の順列がありますので順列の総数は24個です。

n個のものからr個とる場合、
組み合わせの総数はnCr、順列の総数はnPrと書きます。
Cはcombination、Pはpermutationの頭文字です。
1個目のとり方はn通りあります。
1個目をとった時点で、残りは(n-1)個です。
2個目のとり方は(n-1)通りです。
同様に、3個目、4個目、・・・のとり方はそれぞれ(n-2)通り、(n-3)通り、・・・
と一つずつ減っていきます。
r個目をとるときには(n-r+1)通りです。
順列の総数はnPr=n×(n-1)×・・・×(n-r+1)
nPr×n!=n×(n-1)×・・・×(n-r+1)×(n-r)×(n-r-1)×・・・×3×2×1=n!
ですので、nPr=n!/(n-r)!
一つの組み合わせに対してr!個の順列が対応しますので、nCr=nPr/r!=n!/(n-r)!r!
となります。
括弧は一部省略しましたが分かると思います。

では円順列です。
文字通り順列が円になっているものです。
例えば円卓の周りに椅子が6個並べられているとき、6人の座り方には何通りあるか。
回転させて同じ配置になるものは同じ座り方とみなします。
椅子が一列に並んでいる場合は順列です。
円状にしたため、端がなくなったわけですね。
特定の一人を固定して考えると回転を考えなくてもすみます。
この席にはA君が座ると決めてしまうのです。
残り5人の座り方は順列になりますので5P5=5!=120通りです。
一般に、n個の異なるものの円順列の総数は(n-1)!個です。
0!=1ですのでn=1のときにも成り立ちます。

数珠順列は円順列の表裏を区別しないものです。
数珠、ネックレス、首飾りといったものをイメージするといいでしょう。
地面に置いて離すことがないと考えれば円順列と同じですが、
ひっくり返して置き直すことができると考えると数珠順列になります。
例えば①~⑧を円状に並べた場合、
次の二つは円順列としては異なりますが、数珠順列としては同じものです。

①⑧
②  ⑦
③  ⑥
④⑤

⑧①
⑦  ②
⑥  ③
⑤④

n個の異なるものの円順列の総数は(n-1)!個でした。
n>2の場合、表裏をひっくり返すと別の円順列になりますので、
じゅず順列の総数は(n-1)!/2です。
n=1,2の場合はひっくり返しても同じですのでこの式は成立しません。

すべて異なる場合とすべて同じものである場合は順列の個数が簡単に求められます。
並べるものが2種類の場合の順列について考えてみましょう。
例えば、黒い玉4個と白い玉4個の合計8個で数珠を作る場合、
次のような配置が考えられます。
1.
○○
○  ○
●  ●
●●

2.
○○
○  ●
●  ○
●●

3.
●●
●  ○
○  ○
●○

4.
○○
●  ○
○  ●
●●

5.
○●
●  ○
○  ●
●○

1と2は異なる順列ですが、3は2を回転させたもの、4は2をひっくり返してできるものです。
漏れなく重複なくすべての順列を数えるのはなかなか難しいです。
八角形で書くと場所をとりますので、特定の位置から左回りに書くことにすると、
円順列は次の10個です。
1.●●●●○○○○
2.●●●○●○○○
3.●●●○○●○○
4.●●●○○○●○
5.●●○●●○○○
6.●●○○●●○○
7.●●○●○●○○
8.●●○○●○●○
9.●●○●○○●○
10.●○●○●○●○
2と4、7と8は数珠順列としては同じものですので、4,8を除いた8個が数珠順列となります。


4個の黒玉、4個の白玉を上のように正八角形状に並べたときの配置の集合をMとします。
回転して同じになるものも区別します。
上記の1,2,3,4,5の配置はすべて異なる配置です。
8ヶ所の白丸の中から4個を選んで黒にすると考えれば、配置の総数は8C4=70個と分かります。
この配置を回転する操作を考えます。
45度ずつ回転させると、8個の玉の位置は一つずつずれた配置になります。
8回の操作で元の位置に戻りますので、回転の操作は8種類です。
この8個の回転操作は群になります。
積は操作の合成。
積が回転になることは明らか。
単位元は0度の回転。
逆元は逆向きの回転です。

ひっくり返す操作についても考えてみましょう。
ひっくり返す操作を以後、反転ということにします。
反転も8種類あります。
ある玉に注目して、それが反転によって移る先は高々8個です。
任意の2つの玉を選び、それらの中点と八角形の中心を通る直線を考えます。
その直線を軸とする反転によって、2つの玉の位置が入れ替わります。
8種類すべての位置に移動する反転が可能ですので、反転の個数は8個です。
回転と反転をあわせた16個の操作も群になります。


Gの元によってMの元がMの元に変換されるとき、
群Gが集合M上で働くといいます。
群の元の働きのことを作用と呼びます。
Gの元gはMからMへの写像であり、
Mの元mに対するgの作用はg(m)∈M、
gの集合は写像の合成について群になっているという状況です。
Gの単位元はM上の恒等変換です。
対称群もある集合上で働く群です。

Mの元mに対して、すべてのGの元をmに作用させたものの集合を、
mによるG-軌道といい、G(m)と書きます。
G(m)={g(m)|g∈G}
です。
g(m)はMの元ですので、G(m)はMの部分集合です。
G(m)には必ずm自身が含まれます。

具体例としてMは先程の黒玉4個、白玉4個を八角形に並べた配置の集合、
Gは回転操作8個の集合で考えてみましょう。

m=●○●○●○●○の場合、
45度の回転でmは○●○●○●○●に移ります。
他の回転でこの2つ以外に移ることはありませんので、
G(m)={●○●○●○●○,○●○●○●○●}です。
m=●●○○●●○○の場合、
G(m)={●●○○●●○○,●○○●●○○●,○○●●○○●●,○●●○○●●○}
となります。
m=○○○●○●●●
等の場合、作用の結果がすべて異なりますのでG(m)の元の個数はGの位数と等しく8個です。
軌道とはGの作用によってmが変換されるすべての可能性です。
軌道というより移動可能領域といった感じですね。
G(m)の任意の元の軌道はG(m)です。
GによってMが完全に異なる軌道に分割されるわけです。

Gの元である8個の回転をg1,g2,g3,g4,g5,g6,g7,g8とします。
g1は45度の回転、g2は90度の回転、・・・
g8は360度の回転、つまり単位元です。g8(m)=mです。
g1(m),g2(m),g3(m),g4(m),g5(m),g6(m),g7(m),g8(m)がすべて異なる場合、
g(m)の元の個数は8です。
m=●○●○●○●○の場合、g2(m)=g4(m)=g6(m)=g8(m)=mです。
2回周期で繰り返しになっています。
m=●●○○●●○○の場合、g4(m)=g8(m)=mです。
4回周期で繰り返しになっています。
G(m)の元の個数は、mを変化させない回転の個数と一対一に対応しているようです。

次回はこれを一般的に考えてみます。

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