2017年12月15日金曜日

小説の視点について 後編

前回は一人称、三人称の視点について語りました。
今回はそれ以外の視点について書いてみます。
他の視点といっても、二人称の小説なんて見たことないし、他に視点なんてないんじゃない?
メタ視点というものがあるんです!

メタとは高次のという意味で、小説の場合は作者の視点です。
推理小説で読者への挑戦状が出てきたり、歴史小説で資料の引用をしたりするものです。
私はこれが好きではないです。
もちろん小説は作り物なのですが、登場人物にとっては現実なのです。
小説は一個の世界として完結しているべきなのです。
読者はその世界の中でその世界を体験するのです。
別世界の存在である作者が登場するとぶちこわしです。
作者の存在を忘れさせることが作者の務めだと思います。
これもサンプルを書いてみました。

◇◇◇
マインたち一向は素敵なお宝が眠るという洞窟にアタックしていた。

つうこんのいちげき!
マインが大ダメージを受けると、すかさずマゴットが回復呪文を唱える。
マーリンがまもののむれに向けて火炎呪文を唱える。
かろうじて耐えたまものをマインとハンソロが始末する。
「連携がとれるようになってきたね」
「この調子です」
4人は意気揚々と歩を進める。

キャラは基本的にすばやさの大きい順に行動する。
魔法使いなどの範囲攻撃ができるものはなるべく先に行動したいものである。
素早さを上げる装備があるので、先に行動してもらいたいキャラに装備させるとよいだろう。
但し、ランダム要素もあるため、完全にすばやさの順に行動するとは限らない。

階段を下りると現れるまものが明らかに強くなった。
魔法使いの呪文が大活躍である。
「MPが少なくなってきました」
「呪文を使いすぎなんだよ」
「でも、私の呪文がなかったら、すごく苦戦すると思いますよ」
「それはそうだけど、さっきは残り一匹のまものにも呪文使っていただろ。
ああいうときはハンソロにまかせて、お前は身を守ってろ」
「え~。少しでも早く倒した方がいいじゃないですか~」
「先は長いんだからなるべくMPは温存する方向でいきましょう」
「善処します」
しかし、すぐにMPが残りわずかとなったため、いったん洞窟を出ることにした。

MPの管理は非常に重要だ。
MPを回復できるアイテムは存在するが、貴重品なのであまり当てにはできない。
かといって、呪文を全く使わないと戦いが長引いて全滅の危険性が高くなり、
回復に多くのMPが必要になる。
こまめに作戦を切り替えるか、自分で操作をすると管理は容易だが、操作がやや面倒になる。
転職によって攻撃呪文と回復呪文の両方を使うことのできるキャラを作ることができるのはご存じだろう。
これはとても便利である反面、攻撃してほしいところで回復したりと余計な行動をとることも多くなり、
使い勝手が悪くなったりMPの管理が難しくなったりする。
攻撃用のキャラと回復用のキャラはきっちり役割を決めて、それに特化させておく方がいいかもしれない。

彼らは翌日、再び洞窟に挑んだ。
まものの攻撃は相変わらず厳しいが、レベルが上がるにつれ、少しずつ楽になっていく。
何度か洞窟と町を往復し、お金を貯めて装備を一新。
MPを節約しながら進めるようになり、洞窟の更に奥へと向かう。
明らかに雰囲気の違う部屋に宝箱がいくつか置かれているのを発見した。
「やったー!お宝だ!」
勢いよく宝箱を開けるマイン。
中から現れる恐ろしい姿のまもの。
「まずい!」
不意をつかれた彼らは動くことができない。
そのまものは甘~い息を吐き出した。
「何これ・・・眠い」
「寝ちゃだめよ!」
次々と眠りに落ちる仲間たち。
つうこんのいちげき!
マインは瀕死。
逃げ出そうとしたが逃げられず、甘い息で全員が眠らされる。
甘い息とつうこんのいちげきのコンボの前に、彼らはなすすべもなく全滅した。

厳しい戦闘を潜り抜けてやってたどり着いた宝箱に罠とか(笑)。
しかし、この罠は回避することが可能だ。
宝箱が危険かどうか調べることのできる呪文があるのだ。
宝箱を開ける前にはこの呪文でチェックする習慣をつけよう。

次回はMPを節約するためにアイテムを使うテクニックを解説するぞ。
期待してくれたまえ!
◇◇◇

二人称の小説なんて見たことないと書きましたが、実はあります。
「二の悲劇」とか「あなたの人生の物語」の一部は二人称です。
三人称は一人称の不在と考えることができますが、二人称は一人称の存在なしには考えられません。
あなたに語りかける存在が必要なのです。
感謝状とかラブレターは二人称の物語りととらえることが可能かもしれません。
二人称の小説が存在するといっても、めったにないことは間違いありません。
二人称は小説には向いてないと言っていいでしょう。
と言いつつサンプルを書いてみました。

◇◇◇
あなたは女の身でありながら男の子として育てられました。
あなたの父は屈強の戦士でありました。
たった一人で魔王城に乗り込み、返り討ちにあったとされています。
あなたは父の仇である魔王を討ち、世界に平和をもたらすことを期待されたのです。
ここは同情されるべき点ではあるでしょう。
あなたは16歳の誕生日に王様の許しを得て、旅立つことになりました。
王様から支度金と装備品を賜ったあなたは酒場で仲間を募りました。
仲間といってもあなたは彼らに何の報酬も与えず、絶対の服従を求め、
都合のいいように酷使しました。
あなたは仲間とともに数々のまものを殺しました。
最初の頃はピンチになることも何度かありましたが、
まものの死体から金目のものを漁って作った金で装備を整え、
レベルを上げるために格下のまものを惨殺しまくりました。
戦意がなくひたすら逃げようとしているまものを狙って殺しまくったこともあります。
そのまものは何も悪いことをしていないというのに経験値が大きいからというだけの理由で。
また、あなたは花壇を踏み荒らしたり、人の家に勝手に入ってタンスを漁ったりと傍若無人の振る舞い。
人に話しかけては、よく聞こえなかったからもう一度言ってみろと脅しつけ、
何度も何度も同じことを話させたり。
宿屋では夜通し騒いで、宿屋の主人に「ゆうべはお楽しみでしたね」と皮肉を言われたり。
昼夜を逆転させて人々を混乱させたり、火山を噴火させたりと、まるで歩く災害でした。
城の宝物庫を荒らしただけでは飽き足らず、ついには魔王城に乗り込み、秘宝を奪いました。
怒り狂った魔王が人々を迫害するのも知らんぷり。
例え不遇の身であったとしても、あなたのしてきたことは許されることではありません。
あなたは困り切った人々にとらえられ、こうして処刑されることになったのです。
抵抗しても無駄です。
あなたは手足に枷をはめられ、ギロチンの下に縛り付けられているのですから。
この紐をひけばあっという間にあなたの首が切断されることでしょう。
今こそあなたの罪をつぐなうときです。
せめて天国に行けるように祈りなさい。
あなたの魂に安らぎあれ。

紐が引かれ、ギロチンの刃があなたの首に迫ります。

ズバン!o|rz

あなたはしにました。
◇◇◇



最後に千人称視点を紹介します。

◇◇◇
ここは砂漠。
めったに雨など降らないが私は平気。
照りつける太陽も砂の嵐もなんてことはない。
外敵から身を守るために武装もしている。
私に手を出した奴には鋭いトゲをお見舞いよ!
そう。私はサボテン!
◇◇◇

これは仙人掌視点ですね(笑)。

次回はライトノベル ベスト10の発表です!

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