2018年2月19日月曜日

ぐんぐん群が分かる

といいなと思います。
タイトルから明らかだと思いますが、群は「むれ」ではなく「ぐん」と読みます。
群の話に入る前に、勉強法についてちょっと書いてみたいと思います。
様々な勉強法がありますが、理解を深めるために最も効果的なものは
人に教えるということだと思います。
教える人がいなくても、教えるための準備をすることがとても勉強になります。
人に分かりやすく教えようとして教え方を考えていると、
実はよく分かっていなかったということが明らかになったり、新たな発見があったりします。
なんとなく分かったつもりになっていたことが、本当に分かったと思える。
バラバラに覚えたことが結びついて整理される。
ただの知識が自分の血となり肉となる感じです。
しかもこれがなかなか楽しいのです。
というわけでこの文章は自分のために書いています。
最終的にやりたいのはバーンサイドの補題を証明して、円順列、数珠順列の個数を計算することです。
群の定義から始めて(寄り道をしながら)一歩一歩進んでそこまで到達したいと思います。


前回は数学の本質は抽象化だという話をしました。
群は、数の演算の抽象化を進めたもの。演算が定義された集合の一種です。
私は足し算、掛け算を一般化したものと思っています。
足し算、掛け算について共通する性質を考えてみましょう。
実数の足し算では結果も実数、実数の掛け算では結果も実数になります。
どちらも結合法則が成り立ちます。
a+(b+c)=(a+b)+c,a×(b×c)=(a×b)×c
交換法則も成り立ちます。
a+b=b+a,a×b=b×a
結果を変えないような特別な数が存在します。
足し算では0を足しても結果は変わりません。a+0=0+a=a
掛け算では1を掛けても結果は変わりません。a×1=1×a=a
任意の数に対して、結果が先ほどの特別な数になるような数が存在します。
足し算では任意のaについて-aという特別な数が存在し、a+(-a)=(-a)+a=0
掛け算では任意のa(0は除く)について1/aという特別な数が存在し、a*(1/a)=(1/a)*a=1

これらの性質のうち、交換法則を除いたものを満たすものを群と呼びます。
交換法則を満たす群は可換群とかアーベル群と呼ばれます。


きちんと群の定義を書いておきます。

集合Gとその上の二項演算fが群であるとは、次の3つの条件を満たすこと。
1.任意のGの元a,b,cについて、f(a,f(b,c))=f(f(a,b),c)
2.次の条件を満たすGの元eが存在する。
任意のGの元gについて、f(g,e)=f(e,g)=g
3.Gの任意の元gについて、f(g,x)=f(x,g)=eとなるGの元xが存在する。

二項演算はf(a,b)という形で書きましたが、a×b、a・b、abのように積の形で書かれることが多いです。
1は結合法則ですね。
2の条件を満たすeは存在すれば一意です。
仮にe,xが両方条件を満たすとした場合、
f(x,e)=f(e,x)=x
f(e,x)=f(x,e)=e
ですので、x=eです。
このeをGの単位元といいます。
3のxもgについて一意に決まります。
仮にf(g,x)=f(x,g)=e,f(g,y)=f(y,g)=eとすると、y=f(y,e)=f(y,f(g,x))=f(f(y,g),x)=f(e,x)=xとなります。
このxをgの逆元といいます。
gの(-1)乗ということで、g-1 と書くことが多いです。
面倒なので(-g)と書くことにしようと思います。

実数の集合は加法に関してアーベル群を成します。
実数から0を除いた集合は乗法に関してアーベル群を成します。
整数の集合は加法に関しては群になりますが、乗法に関しては群になりません。
逆元が存在しないことがあるからです。
正方行列の和や積についても群を考えることができます。
正則行列(逆行列をもつ行列)の集合は積に関して群になります。
交換法則は成り立ちませんのでアーベル群ではありません。

参考までに、
結合法則だけを満たすものを半群、
結合法則を満たし、単位元が存在するものをモノイドといいます。
加法と乗法のように2種類の二項演算が定義された、環、体というものもあります。
群が最もポピュラーで基本的な概念だと思います。

群に関して成り立つことは、群の構造を持たせられるあらゆるものに成り立ちます。
例えば、あみだくじの集合も群と考えることができます。
縦棒がn本のあみだくじを考えます。
縦棒の上端、下端に1,2,3,・・・,nと番号をつけ、上端のk番に対応する下端の番号をf(k)番とします。
(f(1),f(2),f(3),・・・,f(n))
というn個の数の組がこのあみだくじの本質です。
横棒の数などは意味のない情報ですので切り捨てます。
演算はあみだくじ2つを上下につなげて、新たなあみだくじにすることとします。
結合法則が成り立つことは明らかです。
単位元は横棒のないあみだくじ。逆元は上下を反転させたものです。
交換法則は成り立ちませんのでアーベル群ではありません。
あみだくじはn個のものの順番を並べ替える操作だと考えることができます。
あみだくじをつなげることはこの操作の合成(連続操作)にあたります。

n個のものを並び替える操作をn次の置換(ちかん)といいます。
操作と書きましたが、操作前の状態と操作後の状態の対応関係と考えることもできますし、
変換、写像、関数と考えても問題ありません。
言葉が違っても概念は同じ。その概念に置換という名前をつけただけのことです。
置換の積を定義しましょう。
a,bが置換のときに、bの操作をした後にaの操作をするという操作を積abとします。

置換は操作なので、操作の対象となるものがあります。
それを仮にxとしましょう。
xはn個のものの順列、例えば(1,2,3,・・・,n)などです。
aが置換の場合、aは関数のようなものですので、xに対してaを施した結果をa(x)と書いてみます。
bを施した後にaを施した結果はa(b(x))
これをa,bの積の結果と考え、(ab)(x)=a(b(x))としているわけです。
n=3,x=(1,2,3),a(x)=(2,1,3),b(x)=(3,2,1)の場合、
aは1番目と2番目を入れ替える操作、bは1番目と3番目を入れ替える操作です。
(ab)(x)=a(b(x))=a(3,2,1)=(2,3,1)
(ba)(x)=b(a(x))=b(2,1,3)=(3,1,2)
となります。

n次の置換を元として、置換の積を演算とする群をn次の対称群といいます。
a+b+cとかab+bc+caのような、a,b,cをどう入れ替えても結果が変わらない式を対称式といいます。
入れ替えても結果が変わらないものは対称であり、そのような変換は対称変換です。
この辺から対称群という名前がついていると思われます。

次回は対称群についてです。

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