2021年10月8日金曜日

ニュースのレトリック

 新型コロナ関連でよくニュースを(インターネットで)見るようになりました。

視聴者の目をひくために色々なテクニックが使われています。

参考になりますね。いくつか紹介してみましょう。


まずタイトルは思わずクリックして中を見たくなるような

インパクトのあるものがいいですね。

ワクチン2回接種済の高齢女性、新型コロナ感染で死亡

みたいな。

えっ!ワクチン打っても死んじゃうの?

とびっくりして、詳しい内容を知りたくなりますよね。

中を見るとメインは感染者数の報告でした。

この人については4日前に陽性が判明して、中等症と診断されていた

くらいしか新たな情報がありませんでした。

ワクチン打っても抗体ができるまでに何日かかかるらしいので、

いつ打ったのとか知りたかったのですが、そういう情報は皆無。

内容にふさわしくなくてもとりあえず人目をひくタイトルをつけておけばよいのです。


2回打てず「モデルナ難民」困惑

というのもありました。

2回目の予約がとれないという話なのかと思って見てみたら、ちょっと違いました。

2回目の予約は取れたけれど、自分の都合でキャンセルした場合に、

再度予約をとることができないという話でした。

2回目のみの接種は受け付けしてくれないらしいのです。

単純に2回目の予約が取れないという話なら多くの人に関係しますが、

2回目をキャンセルした人だけとなれば、関係ない人がほとんどでしょう。

自分に無関係だと思えばあまり読む気にはなれませんが、

自分にも関係あることだと誤解させるテクニックですね。


若い世代の感染急増、高齢者の比率は激減

というのも同様ですね。

若い世代は感染しても無症状で気付かないくらいだと言われていたのに

その傾向が変わってきたのかとちょっと不安になるタイトルですね。

ところが、感染急増といっても絶対数が増えたわけではなく、

比率が増えたというだけのことでした。

高齢者の比率が激減すればそれ以外の比率が増えるのは当たり前でしょう。

高齢者の比率が減ったのはワクチンのおかげでしょうね。

何も驚くところのない記事がちょっと付け足すだけで驚きのニュースに早変わりです。


以前「50代以下の死者3.5倍」というタイトルでこのブログに書きましたが、

ほとんど意味のない計算をして危機感を煽るものもありますね。

嘘ではないんですけど。

感染者が1人増えただけであっても、1人から2人になった場合は、

感染者倍増!

と書けばインパクトがあります。

過去最多という言葉も多用されていました。

感染者数最多、重傷者数最多、どこどこで過去最多、何日連続で過去最多、・・・

連続記録が途切れると月曜日としては過去最多、曜日毎の最多は何日連続、・・・

減ってきたら何日連続で減少とか過去最大の減少幅とか、

木曜日としては今年最少とか言い出しました。

ただの数字の増減だけでも様々な工夫ができるのです。


自己触媒的な効果も見込めます。

緊急事態宣言中にどこどこに人出とか、

若者が路上飲みとか、マスク売り切れとか、

ニュースを見た人に自分もやってみようとか、買いに行かなくちゃとか思わせ、

事態を加速させることができます。

現代はSNSで情報が拡散されるのでより大きな効果が見込めます。

事態が大きくなればまたそれを記事にできるのです。


ニュースや記事には事実しかないので客観的で正しいものだと思われがちです。

が、印象を操作することなど簡単至極。

最初に結論を決めておいて記事を書くことなど造作もないことなのです。

例えば、緊急事態宣言中に出歩いている人にインタビューしたとして、

自分の主張したいことに合うものだけを挙げればよいのです。

緊急事態宣言をみんなが重く受け止めていると言いたいのなら、

「ずっと外出を控えていましたが、今日はどうしても用事があって」

「必要最小限の買い物だけ手早く済ますようにしています」

「万全の対策をしています」

逆に、

「感染しても重症化しないし、気にしていません」

「みんな出歩いているし」

「ただの風邪でしょ」

という声を取り上げれば反対の印象を与えることができるでしょう。

自分の意見としては何も書かず、事実だけを書くことによって

好きなように印象を操作することができるのです。

実際こういう記事が多いんですよねー。

もしかしたらインタビューすらしていないかもしれません。

発言を捏造したところで確認しようがないですからね。

すぐに使える実用的なテクニックです。

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