2023年2月17日金曜日

君と紡ぐソネット

 という小説を読みました。

とある高校で出題されたという設定での数学の試験問題とか

東大入試の問題などが登場していましたので、全部解いてみました。

私なりの解法と感想等を書いてみます。

その本にはきちんとした答えが書いていなかったので、

答え合わせはできていません。

計算ミスとかあるかもしれません。


まずは問題文のみ紹介します。

問題の番号は私が勝手につけました。


問題1

1から6までが等確率で出るサイコロをn回振る。

このとき、「2以下の目が出る」事象は何回起こる確率が最も高いか。


問題2

半径1の円に外接する三角形の面積をSとする。

Sの最小値を求めよ。


問題3

5より大きい素数において、双子素数の間にある整数は6の倍数

であることを証明せよ。


問題4(東大模試より)

異なる2つの素数の積で表される自然数の集合をAとする。

(1)40以下の自然数について、集合Aに含まれるものを全て列挙せよ。

(2)連続するn個の自然数が全てAに含まれるようなnの最大値を求めよ。


問題5

三桁の整数Xを考える。

Xを11で割った値がXの格桁の数字を二乗した値の和と等しいとき、

Xを求めよ。


問題6(東大本試験より)

異なるn個の自然数を任意に選び、選んだn個の数の集合をAとする。

このとき、集合Aの空でない部分集合Bで、次の条件を満たすものが

あることを証明せよ。

条件;部分集合Bの全ての要素の和がnで割り切れる。


問題7(算数オリンピックより)

1から10の数が一つずつ書かれた10個のボールがあります。

これらを中身の見えない箱に入れてよく混ぜ、

箱から取り出した順に1から10までの数を一つずつ書き足しました。

ボールに書かれた二つの数の差が、

10個とも全て異なることはありますか。

「ある」ならば、その具体的な例を一つ書きなさい。

「ない」ならば、その理由を説明しなさい。


以上の7問です。



では、問題1から。

私の解法:

「2以下の目が出る」事象をA、

「3または4の目が出る」事象をB、

「5以上の目が出る」事象をCとする。

A,B,Cは排反で、それぞれの起こる確率は1/3。

サイコロをn回振って、起こった事象を記録すると、

A,B,Cの3種類の文字で構成されるn桁の文字列ができます。

この文字列は全部で3^n種類あり、それぞれの文字列が出来る確率は等しい。

kを0以上n以下の整数とし、

Aをちょうどk個含む文字列の総数をf(k)とする。

f(k)を最大にするkを求めればよい。

まず、f(k)を計算してみる。

Aはn個中k個あり、その選び方はnCk通り。

残りの(n-k)個はB,Cがどう並んでいてもいいので、2^(n-k)通り。

従って、f(k)=nCk*2^(n-k)=n!/(k!(n-k)!)*2^(n-k)>0

f(k+1)/f(k)=(n-k)/(2k+2)

f(k+1)≧f(k)と(n-k)/(2k+2)≧1は同値。

このとき、k≦(n-2)/3

k=0,1,2,3,・・・と増やしていくと、

f(k)の値は最初は単調に増加、(n-2)/3が整数であれば同じ値が続き、

(n-2)/3を超えると単調に減少する。


nが3で割ると2余る場合は、(n-2)/3回起こる確率と(n+1)/3回起こる確率が等しく最大。

それ以外の値の場合は、[(n-2)/3]回起こる確率が最大となる。

~~~

何回起こる確率が最も高いかという問題なのに、

答えが一つに決まらない場合があるのがちょっと嫌な問題ですね。

この問題は誰も解けなかったと書かれていたけど(小説の中の話として)、

そんなに難しい問題とは思えないですね。



続いて問題2

私の解法:

三角形ABCの内接円の中心をDとする。

内接円の半径が1のとき、Dから直線ABまでの距離は1。

A(-a,0),B(a,0)を固定し、Dが直線y=1上を動くときのCの位置について考える。

内心は3つの角の二等分線の交点ですので、Dの位置が決まれば

Cの位置も一意に決まり、Dを連続的に動かすとCも連続的に変化する。

Cの軌跡Lはy軸について線対称な曲線になる。

Cのy座標をhとすると、S=ahですので、

hが最小のときにSも最小。

このとき直線y=hはLの接線であり、交点においてLは下に凸。

y=hとLとの接点が複数あると仮定すると、

dを十分小さくとれば、直線y=h+dとLの交点が4個以上になる。

三角形ABCの面積Sは1/2*内接円の半径*三角形の周の長さ=1/2*AB*(h+d)

なので、y=h+dのときの周の長さは一つに決まる。

周の長さが一定になるようなCの軌跡はA,Bを焦点とする楕円なので、

直線y=h+dとLの交点は高々2個となり矛盾する。

よって、y=hとLの接点は1個だけ。

Lはy軸について線対称なのでx=0。

よって、最小値をとるときは角A=角B。

同様に角B=角Cもいえますので、すべての角は等しい。

つまり、正三角形のときに最小。

このとき、辺の長さ=√3であり、面積=1/2*√3*3=(3√3)/2

~~~

最小値をとるのは正三角形のときだろうと簡単に予測はつきますね。

しかし、実際に計算でそれを示そうとするとなかなか厄介です。

まともに計算すると大変そうでしたので、荒技をつかってみました。

この解答が認められるかどうかは分かりませんが。

結果が当たり前なのにすぱっと証明できないのがもどかしいですね。

本書ではエレガントな解法として、

等周問題と同値だと示した上でヘロンの公式、相加相乗平均の不等式を使うと書いてありました。

これだけしか書かれていなかったので私の推測ですが、

次のような解法と思われます。


半径1の円に外接する三角形の集合をTとする。

半径rの円に外接する三角形ABCの3辺をa,b,cとすると、

面積S=1/2*r(a+b+c)なので、S=(a+b+c)/2

Tで面積最小⇔Tで周の長さが最小。

Tの三角形を拡大または縮小して、三角形の周の長さが1になるようにする。

このようにして得られる三角形の集合をT1とする。

Tにおいて周の長さが最小の三角形は拡大率が最大となるので、

Tで面積最小⇔T1で内接円の半径が最大⇔T1で面積最大


三角形の周の長さが1の三角形の集合をT2とする。

T1がT2の部分集合であることは明らか。

T2の三角形に内接する円を書き、その円の半径が1になるように

拡大または縮小すると、半径1の円に外接する三角形の図になる。

これを周の長さが1になるように拡大または縮小すると、元の三角形に戻る。

これはT1の元なのでT1=T2である。

よって、Tで面積最小⇔T2で面積最大


つまり、周の長さが等しい三角形の中で面積が最大になる条件を求めればよい。

s=(a+b+c)/2とすると、ヘロンの公式より、

S=√(s(s-a)(s-b)(s-c))

sは定数であり、s,s-a,s-b,s-c>0なので、

(s-a)(s-b)(s-c)が最大のときにSも最大。

相加相乗平均の不等式より、

((s-a)+(s-b)+(s-c))/3≧((s-a)(s-b)(s-c))^(1/3)

左辺は定数なのでこれが最大値であり、等号成立はa=b=cのとき。

つまり、元の問題においても、正三角形のときに最小値をとる。

このときの面積は、1/2*√3*3=(3√3)/2



等周問題と同値なのは明らかとは思えないのでこれくらいのことは書かないと

いけないかなと思いました。

等周問題の解法はヘロンの公式一発でいけるんですね。

その部分はなかなかエレガントだと思いました。


問題3

私の解法:

偶数の素数は1個しかないので双子素数はどちらも奇数。

連続する3個の自然数の中には必ず3の倍数が含まれる。

3の倍数で素数は3だけ。

この問題では5より大きい素数とのことなので、3の倍数の素数は含まれない。

よって、双子素数の間にある整数は3の倍数であり偶数でもあるので

6の倍数である。

~~~

全く悩むところがありませんでした。


問題4

私の解法:

(1)については順番に調べるだけなので省略。

面倒なので調べていません。

(2)について

連続するn個の自然数の中には必ずnの倍数が1個含まれる。

n≧4の場合、必ず4の倍数が含まれる。

4の倍数は素因数2を2個含むため、異なる2つの素数の積になることはない。

よって、n≦3。

4の倍数を含まないので、3個の場合は自然数3個を4で割った余りは1,2,3になる。

3つの自然数を4k+1,4k+2,4k+3として調べてみる。

40に近いところから調べてみると、

k=9のとき、4k+1=37なので不適。

k=8のとき、4k+1=33=3*11,4k+2=34=2*17,4k+3=35=5*7で、条件を満たしている。

以上より、nの最大値は3。

~~~

最大値であることを証明するためには、実際に条件を満たす例を挙げないといけませんから、

そんなに大きな数ではないと分かりますね。

(1)で40以下の数を調べさせているのでこの中に答えがあるんだろうなと推測できます。

それも最後の方にあるんだろうなと見当がつきます。

試験問題として出題されているということ自体が大きなヒントになってしまうんですね。

ふと自分でこういう問題を思いついて考えてみるときは、

どれくらいの難易度なのか全く見当がつきません。

もしかしたら誰にも答えられないような超難問かもしれません。

そういうのに挑むのが本当の数学の楽しさかもしれません。

東大模試と書いてあったので難問かなと思ったら簡単でした。


問題5

私の解法:

Xの各桁の数を左からa.b.cとすると、

X=100a+10b+c=11(9a+b)+a-b+c

Xは11の倍数なので、a-b+cは11の倍数。

0≦a,b,c≦9なので、a-b+cの値は-9以上18以下。

a-b+cは0または11。


a-b+c=0の場合

X=11(9a+b)=11(a^2+b^2+c^2)より、9a+b=a^2+b^2+c^2

b=a+cを代入してaについて整理すると、

a^2+(c-5)a+c^2-c/2=0

aについての二次方程式とみたときの判別式は、

D=(c-5)^2-4(c^2-c/2)=c^2-10c+25-4c^2+2c=-3c^2-8c+25

整数解をもつためには少なくともDが平方数である必要がある。

c=0のとき、D=0

c=1のとき、D=14

c≧2のとき、D≦-3*2^2-8*2+25=-3

Dが平方数になるのはc=0のときのみ。

このとき、a^2-5a=0となるので、a=0,5

Xは3桁の数なのでaは0ではなく、5と確定する。

a-b+c=0より、c=5であり、X=550。

これは条件を満たしている。


a-b+c=11の場合

X=11(9a+b+1)=a^2+b^2+c^2より、9a+b+1=a^2+b^2+c^2

b=a+c-11を代入して整理すると、

a^2+(c-16)a+(2c^2-23c+133)/2=0

D=c(-3c+14)-10

c≧5のときは-3c+14<0なので、D<0

c=4のときは、D=-2

c=3のときは、D=5

c=2のときは、D=6

c=1のときは、D=1

c=0のときは、D=-10

Dが平方数になるのはc=1のときのみ。

このとき、a^2-15a+56=0であり、(a-7)(a-8)=0なので、a=7,8

b=a+c-11であるが、どちらの場合もb<0となるため不適。


以上より、答えはX=550。

~~~

三桁の整数という時点で有限個(900個)ですから、

時間をかければすべての数を1個1個調べることも可能ですね。

そういう意味ではあまり面白くない問題です。

答えを見つけるプログラムを作ってコンピュータで調べれば一瞬で終わります。

そういう問題に頭を使うのは馬鹿馬鹿しいと思ってしまいますね。


問題6

私の解法:

集合Aの要素をa(1),a(2),a(3),・・・,a(n)とする。

1以上n以下の自然数kについて、

a(1)からa(k)までのk個の和をSkと定義する。

Skをnで割った余りをRkとする。

Rk=0となるkがあれば、{a(1),a(2),a(3),・・・,a(k)}が条件を満たしている。

Rk=0となるkがない場合

自然数をnで割ったときの余りはn種類。

0を除くと(n-1)種類なので、

n個のRkの中には値が同じものが必ず存在する。

k=k1,k2(k1<k2)のときに同じ値になるとすると、

Sk2-Sk1はnの倍数。

よって、{a(k1+1),a(k1+2),a(k1+3),・・・,a(k2)}の(k2-k1+1)個の集合は条件を満たす。

証明終わり。

~~~

この手の問題は大体鳩の巣原理を使うんですね。

n個の箱に、全部で(n+1)個のものを入れたら、どれかの箱には2個以上入ってる

というやつです。

部分集合の個数は2^n個なのでnよりずっと大きな数になります。

どうやって鳩の巣原理を使えばいいだろうと考えるとすぐに答えにたどりつきました。

これも簡単すぎますね。

東大が余裕に思えてきます。


問題7

私の解法:

答えは「ない」。

1から10までの数字を合計すると55なので、

10個のボールに書かれた2個の数を全部足すと110。

1個のボールに書かれた数の差は、大きい数から小さい数を引いたものと考えられる。

その差がすべて異なるので、差は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の10個。

その合計は45。

よって、大きな数の合計から小さな数の合計を引くと45になる。

大きな数の合計と小さな数の合計は110なので、

45+110=大きな数の合計×2

左辺は奇数、右辺は偶数なので不可能。

~~~

算数オリンピックということなので文字とかを使わずに書いてみました。

これって二つの数の差がa-bなのか|a-b|なのかよく分からないんですが、

算数では負の数は習わないんでしたっけ?

大きい数から小さい数を引いたものという意味で考えました。

本書には答えは載っていなくて、答えを見たらエレガントでびっくりしたみたいなことしか

書かれていませんでした。

多分私の解法と同じものだと思います。

これは思いつけば簡単なんですけど、思いつかないと困りますね(笑)。

私はボールが1個のときには可能で、2個のときには不可能ということから、

偶数のときには不可能なんじゃないかなと思って偶奇に注目してみました。

実際にはちょっと違う条件でした。


ボールがn個の場合、

大きい数の和をA、小さい数の和をBとすると、

A+B=n(n+1)

A-B=(n-1)n/2

2A=n(n+1)+(n-1)n/2=n/2*(2n+2+n-1)=n(3n+1)/2

n(3n+1)が4の倍数となるので、nまたは3n+1は4の倍数。

nを4で割ったときの余りが2または3のときには不可能。

余りが0または1のときには恐らく可能。

可能であることの証明は面倒そうでしたので断念。

n=kのときに成立すればn=k+4のときにも成立すると言えれば証明できるので

その方向で考えてみたのですが、難しそうでした。


ちょっとしたパズルのような感じで楽しめました。

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